論文紹介

午後高温・夕方急速降温管理が促成栽培キュウリの生育に及ぼす影響

今回紹介する論文は「午後高温・夕方急速降温管理が促成栽培キュウリの生育に及ぼす影響」です。

タイトルから読み取れるかもしれませんが、キュウリに対する温度管理の効果を記した論文になります。

紹介する内容は簡単なものになりますので、詳しい実験方法や結果・考察は下記のリンクから論文を読んでいただければと思います。

それでは早速、内容を見ていきましょう。

午後高温・夕方急速降温管理が促成栽培キュウリの生育に及ぼす影響

https://www.jstage.jst.go.jp/article/hrj/16/2/16_155/_article/-char/ja/

概要

本論文の内容を簡潔に言うと下記になります。

「午後よりも午前のハウス内気温を高める温度管理」と「午前より午後のハウス内気温を高め日没とともに気温を急速に低下させる温度管理(PMHT・QD処理)」の比較検討

ここで言う、「 午前より午後のハウス内気温を高め日没とともに気温を急速に低下させる温度管理 」というのはクイックドロップと呼ばれるハウスの環境制御技術を応用したものです。

クイックドロップとは一般的に日の入り付近でハウス内気温を急激に下げることです。

急激にハウス内気温を下げることで、果実等への転流促進や根圧による果実への水の移動割合上昇等の効果が得られます。

さて、注目すべきはどんな結果が得られたかですが...

PMHT・QD 処理により果実の成長が促進されて、収穫日数が短縮された

キュウリの収穫日数が短くなったことで、農家にとっては嬉しい結果のように見えますが、もちろん課題も存在します。

それでは、実験結果等を見ていきながら、課題についても併せてみていきましょう

論文を軽く深堀り

この論文では温度管理が重要となってきますが、図1がハウスの温度設定で図2が実際のハウス内気温です。

ちなみに、温度設定に違いがあっても両者とも日平均気温は20[℃]前後で推移しています。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/hrj/16/2/16_155/_article/-char/ja/

https://www.jstage.jst.go.jp/article/hrj/16/2/16_155/_article/-char/ja/

さて、実際にPMHT・QD処理をして対象区と比較すると、下記の結果が得られました。

葉よりも高い温度で果実の表面温度が長く保たれる

一般に葉よりも果実の方が温度が高い場合、キュウリはより温度が高い果実への転流を促進するので果実肥大が促進されます。

したがって、PMHT・QD区の方が対象区よりも果実に光合成産物が流入し、果実の収穫までの日数が短縮されました。

しかし、良いことばかりではなく問題もあります。

PMHT・QD区では寡日照期(12月~1月)に草勢が低下したのです。

これは果実に流入する光合成産物の量が多くなりすぎて、葉の成長や側枝の発生が抑制されたと考えられます。

そのため、PMHT・QD処理は草勢を強く維持するような管理と組み合わせることが必要になります。

まとめ

簡潔に本論文を読んでいきましたが、結果と課題は下記のようになります。

【結果】PMHT・QD処理は
・葉よりも高い温度で果実の表面温度が長く保たれる
・果実の成長が促進されて、収穫日数が短縮される

【課題】 PMHT・QD処理は
・寡日照期に草勢が低下する
・草勢を強く維持する管理と組み合わせる

本論文では他にも熱画像測定装置を使用して植物体表面温度の経時変化を見たり、茎径や葉長の推移を週毎に見たりと細かいデータが揃っています。

ぜひとも本論文をご覧ください!

本論文に対する感想

キュウリ栽培で環境制御をやろうとする人は読んだ方が良いと素直に思えました。

施設園芸の環境制御技術であるクイックドロップ、キュウリの果実肥大の条件や転流の考え方といった内容がわかりやすくまとまっています。

温度管理が題材で内容がイメージしやすいことと論文自体も7ページと読みやすいので、初めて論文を読む人にもおすすめです。

おすすめ度:

午後高温・夕方急速降温管理が促成栽培キュウリの生育に及ぼす影響

https://www.jstage.jst.go.jp/article/hrj/16/2/16_155/_article/-char/ja/

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