論文紹介

論文の読み方 ~読む順番のコツ~

論文と聞くと多くの方が苦手意識を持っているかと思います。

ただ、実際に読んでみると論文構成はどの論文もほぼ共通していますし、内容をものすごく簡単に把握するなら3分もかからないです。

なぜ3分未満で内容を大雑把に把握できるのかというと論文には読み方があるからです。

この論文の読み方を知っていれば国内論文だけでなく海外論文も同じように読むことができます(英語などの言語問題は出てきますが...)。

ただし、論文の細かい表現や構成要素の名称は分野によって多少異なってきますので、本章以降に記載されている内容が読む論文に対して100%適用するわけではないことだけ気をつけてください。

それでは、次章から論文の読み方を簡単に解説しています!

論文の構成

一般的に論文は国内海外問わず、下記のような順番で構成されています。

  1. 要旨(Abstract)
  2. 序論(Introduction)
  3. 方法(Material & Method)
  4. 結果(Result)
  5. 考察(Disscution)
  6. 結論(Conclusion or Summary)
  7. 参考文献(Reference)

論文によっては名称が異なっていたり(結論がまとめなど)、省略している構成部分があったり(要旨や考察が省略されるなど)しますが、順番はほぼ変わりません。

※この他にも謝辞や付録などの構成要素もありますが、ここでは省いて紹介しています。

じっくりと細かく読んでいきたい場合は順番通りに読んでいくことになりますが、そうするとどうしても時間はかかってしまいます。

なので、簡単に論文内容を把握したいときは構成の一部しか読みません。どの構成要素をどの順番で読むかが論文の読み方の一番重要なところです!

要旨(Abstract)

要旨とは論文の要点を短くまとめたもので、抄録と呼ばれたりもします。

論文全体をまとめ、かつ、読者が論文を読むかどうか判断できる内容で書かれており、要旨自体の文字数はおおよそ200文字~400文字程度です。そこまで長い内容ではないので、読み終えるまでにさほど時間はかからないと思います。

要旨には論文の本当に重要なポイントだけを記載しているので、一度要旨に目を通してみて、知りたい情報が書かれていなさそうだったら次の論文を読んでいくことになります。

ちなみに、論文においてweb上で検索されているのはタイトルと要旨なので、実験の細かい手段等を検索しても知りたい情報が書いてある論文が出てこないなんてこともあります。

序論(Introduction)

序論とは緒言やはじめにと呼ばれたりする部分で、研究するに至った背景や研究課題の関連研究に触れて問題提起を行う部分です。

論文で扱う内容が先行研究とどう違うのかを明らかにして、研究の目的を明確に記載しています。また、序論では仮説や実験方法等も簡潔に述べられていることがほとんどです。

論文を深く読んでいく場合は、この序論が次章以降の理解を助けてくれる役割を担うので、多少長い文章だと思っても読み飛ばさずに読んでいきましょう。

方法(Material & Method)

方法は準備や材料と方法などとも呼ばれ、論文で使用した材料や実験方法、手順を時系列で説明している部分です。

序論で示した問題点に対してどのように研究したのかが記載してありますが、読者が論文の研究を再現できるぐらいに細かく説明してあります。

研究を行う上で必要となる前提知識や使用した器具・装置の名称なども事細かに書かれており、次章以降の結果などに論理を積み重ねていく大事な土台となります。

また、論文で使用した方法が既存の方法であった場合は、その方法名と文献が示されることがほとんどです。まだ論文の分野に慣れていない際には、既存の方法が書かれた論文も読む必要がでてくる場合もあります。

専門的な内容が最も多い部分なので、論文初心者の方々にとってはこの辺りから読むのが辛くなってくるかもしれません。

結果(Result)

結果は方法で述べた実験の結果や分析・計算等が書かれている部分です。得られたデータをありのまま記載してあり、都合の良い結果だけを抜き出してはいません。

結果では個人の意見等の主観は含めず、すべての文章は客観的に書かれています。数値やグラフといった図表が多く記載されているので、基本的には読みやすい部分と言えます。

しかし、数値やグラフを多用するので統計的な知識を多少持っていないと理解が難しい場合もあります(相関係数や標準偏差など)。

分野ごとによって必要とされる知識に程度の差はありますが、興味のある方は調べてみてください。

考察(Disscution)

考察は結果で得られた内容に対して議論・検討を行っていく部分です。

具体的には、序論で示した問題に対する仮説が裏付けされたのかどうか、論文の内容が先行研究の内容と比較してどうなのか、本研究における課題や展望などが書かれています。

また、考察は本章に至るまでに明らかになった事実から著者の考えといった主観だけでなく、結果に対する例外や異常値など著者の考えの根拠における整合性や普遍性などを客観的に記されてもいます。

著者が一番伝えたい内容はこの考察に書かれているので、論文の内容で言えば最も重要な部分と言えます。

結論(Conclusion or Summary)

結論はおわりにやまとめとも呼ばれ、本論文の内容を簡潔にまとめて結果と考察から導いた結論を示しています。

基本的な内容は、序論で提起した問題、結果で得られた新しい事実、考察で示した自身の解釈、将来の展望の順番となっています。

論文の内容がまとまっているという点では要旨と似ていますが、要旨よりも細かく論文の目的・方法・結果・考察などが記載されています。

たまに要旨と結論が同じ論文がありますが、この論文はあまり良いものではないのでお気をつけてください。

参考文献(Reference)

参考文献は論文を書くにあたり参考にした論文や本といった文献情報を明記している部分です。

表記の仕方は分野によって異なりますが、書き方の一例は下記になります。

著者名(発行年)題名, 出版社, ページ数
例. 藤原俊六郎(2013) 新版 図解 土壌の基礎知識, 農山漁村文化協会, p. 161-169.

一般的に論文は本文中に、(1)のように記載されている文章があります。この(1)が参考文献の番号を示しているので、参考文献のリストから番号を探すことで、実際に参考にした文献情報を知ることができます。

また、分野によっては引用文献と分けて表記されていたりなどまちまちです。ですが、基本的にはどの文献からどこを参考・引用したかをわかるように記載されているので、多少の違いがあっても理解できるようになっています。

論文を読む順番

前章では論文の構成を簡単に解説しましたが、本章では論文を読む順番を解説します。

論文を読む順番

なるべく時間をかけずに論文を読むために、初めは要旨から読んでいきます。ちなみに、じっくりと論文を読む場合も初めは要旨から読んでいきます。

要旨を見て論文の全体像を把握し、読むか読まないのかの判断をします。読む場合は次に結論を見ます。

結論では要旨よりも詳しく研究の目的や意義をまとめているので、結論を読んで論文の理解を深めた後にもう一度読む読まないの判断をします。読む場合は序論と考察を読んでいきます。

序論と考察を読んでいくにあたり、考察の部分で分からない部分が出てくると思います。その際には方法や結果の部分で対応している説明を流し読みし、内容を整理したうえで考察を読み進めていきます。

初めのうちは対応している説明を探すのに多少時間がかかるかもしれませんが、慣れてくると分からない部分が考察のどの位置に書かれているのかだけで、対応している説明が方法や結果のどの辺りに書かれているのか分かるようになります。

この読み方は海外の論文でも同じです。英語だろうが上記のように読んでいけば時間をかけずに論文を読んでいけます。

まとめ

論文の構成は次のようになっており、分野によって多少の違いはあれど国内・海外論文問わず同じような構成になっています。

1. 要旨→論文の概要
2. 序論→研究の背景・問題提起
3. 方法→研究で使用した材料・手順
4. 結果→実験で得られたデータ
5. 考察→著者の解釈
6. 結論→論文のまとめ
7. 参考文献→参考にした文献情報

そして、論文は次の順番で読んでいきます。

要旨→結論→序論と考察→(その他は必要に応じて)

初めは読むのに抵抗があると思いますが、段々と慣れてきます。そのうち、この論文は読みやすいけどこっちの論文はちょっと読みにくいなんて感想が出てくると思います。

論文はなかなか馴染みのないものですが、興味のある分野で読んでみてください。

-論文紹介
-